ダラークライシスへの道

ダラークライシスへの道

経済力の圧倒的優位性の喪失。第二次世界大戦後、米国は世界のなかで圧倒的な経済力を誇ってきた。しかし、新興経済国である中国に抜かれるのはもはや時間の問題となっている。米国と中国の経済力を、1年間に国内で生み出される所得の総和である名目GDPの規模を比較してみよう。

 

IMFの推計によれば、2009年に14.1兆ドルであった米国の名目GDPは、2015年には18.0兆ドルに増加する。一方、中国の名目GDPは、2009年の5.0兆ドルから2015年には10.)兆ドルに倍増するものの、まだ米国の半分強の水準だ。しかし、これは中国が為替レートを実力よりも過小に誘導しているためだ。そこでドル建ての名目GDPを算出する為替レートを、実態を反映した購買力平価に変えて計算をやり直すと、中国の名目GDPは、2009年に9.0兆ドルとなり、2015年には17.1兆ドルまで拡大するという推計になる。すなわち、中国経済は今後5年程度で米国にほぼ匹敵する規模になり、米国が基軸通貨国の第一要件である経済力の圧倒的優位性を失うのは時間の問題となっているのだ。