1980年来の金融バブルの清算
米国経済は1980年以降に発生した負債バブルの清算のため、今後IMFの推計の通り順調に拡大を続けることは難しいかもしれない。名目GDPは国内で生産される所得の総和であると同時に、国内で生産される財とサービスの総和でもある。すなわち、米国の名目GDPは、1年間に米国内で生産される財とサービスの総和であり、経済規模を表したものとなる。これに対して、株式や借り入れによって米国経済がどれぐらい負債に依存しているかをみてみよう。
米国のGDPに対する負債(株式と市場性債務の合計)は、1945年から1980年代半ばまでの米国経済が製造業中心に拡大していた頃は、ほぼ300%の水準で安定的に推移していた。ところが、その後、米国経済の構造が金融緩和とバブルに助けられた金融産業中心の成長にシフトすると負債依存度が急激に上昇。 1984年に310%であった負債比率(名目GDP比)は、1990年には345‰2000年には431%、また、サブプライム・クライシスの2007年には464%までも文字通りバブルのように膨張した。その後、米国の金融バブルは崩壊したが、米国の負債比率はいまだ高水準のままだ。
家計部門のバランスシート調整を伴う不動産バブルの清算、不動産バブルを担ってきた政府支援公社(GSE)と呼ばれるファニー・メイ、フレデイー・マックといった住宅金融公社の整理もこれからが正念場だ。その過程で、米国の負債比率は、バブル前の水準である300%程度まで是正される必要があるだろう。換言するなら、米国経済は、少なくとも今後5年ないし10年間、負債削減(デイ・レバレッジ)による調整局面が継続し、その間、本格的な景気回復は望めないとみておいた方がいい。
最近、米国の一部の経済指標に明るさが出始め、ブッシュ減税の延長も決定されたことから、景気に対する楽観論から長期金利が上昇している。しかし、バランスシートが毀損した借入過多の状態で長期金利が上昇すれば、早晩景気に悪影響が出る。すなわち、景気楽観論とは裏腹に、長期金利の上昇は米国経済にとって大変危険なサインと捉えるべきだ。